カセットテープに、好きな曲を録音していた夜がありました。
ラジオから流れてくる曲を待って、
「あ、来た」と思った瞬間に、
カチャン、と録音ボタンを押す。
うまく録れたかは、終わってみないと分からない。
DJの声が入ってしまうこともあるし、
イントロの最初が切れてしまうこともある。
でも、あの一本には、
曲だけじゃなく、その夜の部屋の空気まで入っていた気がします。
そしてもうひとつ。
上書き録音という、少し怖い行為。
何かを録音するということは、
そこに入っていた前の音を消してしまうこと。
消してしまった音は、戻らない。
——でも、不思議なことに、
完全に消したはずの音が、
自分の中でずっと鳴っていることもあります。
第5回「ダビングした夜」。
カセットテープと、録音すること、消してしまうこと。
そして、消えたはずなのに残ってしまうことの話です。
静かな時間に静かな場所で、聴いていただけたら嬉しいです。
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「#5ダビングした夜 — 上書きしてしまった音と、消えないままの言葉」
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